ブレイムシフティングとは?
ブレイムシフティング(Blame Shifting)とは、自分の失敗や問題行動、暴言などの責任を認めず、その原因や責任を他人へ移すことです。
日本語では、「責任転嫁」や「責任のすり替え」と表現されます。
誰でも、自分の失敗を認めたくなかったり、とっさに言い訳をしてしまったりすることはあります。
しかし、モラハラ関係で問題になるブレイムシフティングは、一度の言い訳ではありません。
何か問題が起きるたびに、
「自分が悪かった。」
ではなく、
「お前がそうさせた。」
「お前にも原因がある。」
「俺を怒らせたお前が悪い。」
と、責任を相手へ移すことが繰り返されます。
その結果、傷つけられた側が、「私にも原因があったのかもしれない」と自分を責めるようになることがあります。
悪いのは、いつも自分以外
ブレイムシフティングを繰り返す人の中には、自分にとって都合の悪い出来事が起きると、その原因を自分以外に探す人がいます。
- 仕事で失敗したのは、上司の説明が悪かったから。
- 遅刻したのは、家族が準備を邪魔したから。
- お金がなくなったのは、小遣いが少なすぎるから。
- 怒鳴ったのは、相手が怒らせたから。
- 物に当たったのは、相手がしつこく責めたから。
- 約束を守れなかったのは、相手の伝え方が悪かったから。
- 機嫌が悪いのは、家族が気を利かせなかったから。
失敗や問題が起きても、自分の行動を振り返るのではなく、「誰のせいか」を探します。
そして、その責任を最も身近な人へ向けることがあります。
本人の中では、自分が問題を起こしたのではなく、「相手のせいで、そうせざるを得なかった」という話へ変わってしまうのです。
「その言い方は嫌」と伝えただけなのに
例えば、傷つく言い方をされた時に、
「その言い方は嫌だから、やめてほしい。」
と伝えたとします。
本来であれば、話し合うべきなのは、「相手を傷つける言い方をしたこと」です。
しかし、ブレイムシフティングが起こると、話は別の方向へ進みます。
- 「お前の言い方も悪い。」
- 「そんなことで怒る方がおかしい。」
- 「お前がしつこいから、そう言った。」
- 「俺だけが悪いみたいに言うな。」
- 「そもそも、お前がちゃんとしていれば言わなかった。」
- 「俺を怒らせたお前にも責任がある。」
最初は、「傷つく言い方をやめてほしい」という話だったはずです。
ところが、いつの間にか、傷つけられた側の言い方や態度が問題にされています。
そして最後には、
「私の伝え方が悪かったのかな。」
「私が怒らせたのかな。」
「私にも原因があったのかな。」
と、被害を受けた側が自分を責めるようになります。
原因があったことと、責任があることは同じではありません
人間関係では、双方に改善できる部分があることもあります。
しかし、相手に不満があったことと、怒鳴る、侮辱する、無視する、威圧するなどの行動を選んだ責任は別の問題です。
例えば、夫婦喧嘩で相手の言い方に腹が立ったとしても、それだけで暴言を吐いた責任がなくなるわけではありません。
「腹が立った。」
という感情と、
「怒鳴った。」
という行動は、分けて考える必要があります。
感情が生まれることは自然です。
しかし、その感情を理由に相手を傷つけたのであれば、自分が選んだ行動については、自分で責任を持つ必要があります。
「あなたの言葉に腹が立った」は説明になることはあっても、「だから傷つけても仕方がない」という免罪符にはなりません。
何を話しても、最後はあなたのせいになる
ブレイムシフティングが繰り返される関係では、どんな問題を話していても、最後には同じ結論になることがあります。
相手が怒鳴った。
でも、「怒らせたあなたが悪い。」
相手が約束を破った。
でも、「確認しなかったあなたが悪い。」
相手がお金を使い切った。
でも、「自由に使えるお金が少ないから悪い。」
相手が不機嫌になった。
でも、「気を利かせなかったあなたが悪い。」
相手が傷つく言葉を言った。
でも、「冗談を真に受けるあなたが悪い。」
どれだけ丁寧に説明しても、相手が自分の責任を認めない限り、話は何度でもこちらへ戻ってきます。
そのため、話し合いをするほど疲れ、「もう私が謝った方が早い」と感じるようになる人もいます。
責任転嫁が続くと、自分の感覚が分からなくなる
何度も「お前が悪い」と言われ続けると、最初は納得できなかったことでも、少しずつ自信がなくなっていきます。
「私が気にしすぎなのかな。」
「普通なら怒らないのかな。」
「私がもっとちゃんとしていれば、怒鳴られなかったのかな。」
「私が我慢すれば、うまくいくのかな。」
そう考えるようになり、自分の気持ちや判断より、相手の言葉を優先するようになることがあります。
しかし、相手が怒ったことと、あなたが悪いことは同じではありません。
相手が不機嫌になったことと、あなたに責任があることも同じではありません。
誰かの感情をすべて管理し、機嫌を取り続ける責任まで、あなたが背負う必要はありません。
ブレイムシフティングとガスライティングの違い
ブレイムシフティングとガスライティングは、同時に起こることがありますが、意味は少し違います。
ブレイムシフティングは、自分の責任を相手へ移すことです。
例えば、
「怒鳴ったのは、お前が怒らせたからだ。」
という言葉は、怒鳴った責任を相手へ移しています。
一方、ガスライティングは、出来事や相手の感覚を否定し、自分の記憶や判断を疑わせる心理的な操作です。
例えば、
「そんなことは言っていない。」
「お前の思い込みだ。」
「考えすぎだ。」
と繰り返し言い、相手に「私の記憶が間違っているのかな」と思わせます。
責任を押しつけるのがブレイムシフティング。
現実や感覚を疑わせるのがガスライティング。
ただし、実際の関係では、この二つが組み合わされることもあります。
DARVOとの関係
ブレイムシフティングは、DARVO(ダーヴォ)とも深く関係しています。
DARVOとは、問題を指摘された側が、
- 否定する
- 相手を攻撃する
- 加害者と被害者の立場を逆転させる
という流れを指します。
例えば、
「その言い方で傷ついた。」
と伝えたのに、
「そんな言い方はしていない。」
「いつまでも責めるお前の方がおかしい。」
「俺の方が傷つけられている。」
と話が変わっていくことがあります。
最初は傷つけられた側だったはずなのに、最後には責めた側、加害者のように扱われます。
ブレイムシフティングは、この立場の逆転を起こすために使われることがあります。
▶ モラハラ用語|DARVOとは?|加害者と被害者が逆転する心理
自分の責任を認める人との違い
もちろん、人は誰でも間違えます。
感情的になり、言いすぎてしまうこともあります。
大切なのは、一度も失敗しないことではありません。
自分の行動を振り返り、必要な時に責任を認められるかどうかです。
自分の責任を認める人は、
- 「あの言い方はよくなかった。」
- 「腹が立っていたけれど、怒鳴ったのは自分の責任だ。」
- 「傷つけてしまってごめん。」
- 「次からは同じことを繰り返さないようにする。」
と、自分の行動について話します。
そして、謝るだけではなく、行動を変えようとします。
一方、責任転嫁が繰り返される場合は、謝ったとしても、
「悪かったけど、お前も悪い。」
「ごめん。でも、お前が怒らせた。」
と、最後には責任を相手へ戻します。
謝罪の中に「でも」が入り、毎回同じことが繰り返されるなら、言葉だけではなく、その後の行動を見ることも大切です。
ブレイムシフティングに気づいたら
責任転嫁をされると、「私にも悪いところがあるかもしれない」と考えてしまうことがあります。
自分を振り返ることは大切です。
しかし、自分に改善できる部分があることと、相手の暴言や威圧まで引き受けることは別です。
話がすり替わったと感じた時は、心の中で整理してみてください。
- 最初は何について話していたのか。
- 誰が、どの行動を選んだのか。
- 今、別の問題へ話が変わっていないか。
- 相手の感情の責任まで背負わされていないか。
- 毎回、自分だけが謝って終わっていないか。
相手を納得させるためではなく、自分の感覚を見失わないために、出来事をメモしておくことも役立つ場合があります。
「私が悪いのかもしれない」と思った時ほど、起きた出来事と、相手から言われた解釈を分けて考えることが大切です。
まとめ
ブレイムシフティングとは、自分の失敗や問題行動の責任を認めず、相手や周囲へ責任を移すことです。
怒鳴ったのは、あなたが怒らせたから。
約束を破ったのは、あなたの確認が足りなかったから。
不機嫌なのは、あなたが気を利かせなかったから。
何が起きても、「自分以外の誰か」が悪い。
その責任転嫁が繰り返されると、傷つけられた側は、自分の感覚や判断に自信を持てなくなることがあります。
しかし、相手の感情や行動の責任まで、すべてあなたが背負う必要はありません。
相手が怒った理由と、相手があなたを傷つける行動を選んだ責任は、別のものです。
何が起きても最後はあなたのせいになる関係を、「普通の話し合い」だと思わなくていいのです。
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