境界線を引き始めて気づいたこと|我慢していた頃の自分との違い

境界線

境界線という言葉を知ったとき、

「そうか。自分と相手の間には、境界線が必要なんだ」

と頭では分かっても、すぐにできるとは限りません。

特に、長い間まわりの顔色を見たり、相手の機嫌を悪くしないように気を使ったりしてきた人にとって、境界線を引くことは思っている以上に怖いものです。

「こんなこと言っていいのかな」

「怒られないかな」

「私が冷たいのかな」

そんなことを考えて、今まで通り自分が我慢したほうが楽だと思ってしまう。

だから、まだ境界線を引いたことがない人に、

「境界線を引けば楽になるよ」

と言っても、なかなかピンとこないかもしれません。

でも、実際に小さな境界線を引き始めると、少しずつ見えてくるものがあります。

それは、

「私は今まで、こんなところまで我慢していたんだ」

ということです。


我慢している最中は、「我慢していること」に気づきにくい

人は、長く続いていることには慣れていきます。

相手が不機嫌にならないように言葉を選ぶ。

頼まれたら、本当は嫌でも引き受ける。

言いたいことがあっても飲み込む。

家の空気が悪くならないように、自分が先に折れる。

それが毎日続いていると、いつの間にかそれが「普通」になります。

だから、自分では、

「私はそんなに我慢していない」

と思っていることさえあります。

でも、境界線を引き始めると、その「普通」に少しずつ違和感が出てきます。

「あれ?」

「これって、本当は言ってよかったことなんじゃない?」

「なんで私は、こんなことまで怖がっていたんだろう?」

そこで初めて、以前の自分がどれほど相手に合わせていたのかが見えてくることがあります。

境界線の基本については、境界線を引こう。|合わない人から、あなたを守る「心の線」でも詳しく解説しています。


家族なのに「これくらい言っていい」が分からなくなっていた

本来、人と人との関係には、ある程度の自由があります。

家族だからといって、いつでも相手の希望を優先しなければならないわけではありません。

「今日は疲れてる」

「今は話したくない」

「それは自分でやって」

「私はそう思わない」

そんな、ごく普通の言葉を言ってもいいはずです。

ところが、相手の機嫌を長く気にしていると、こうした言葉さえ言えなくなることがあります。

言う前に、頭の中で相手の反応を予測する。

「これを言ったら怒るかな」

「また空気が悪くなるかな」

「面倒なことになるくらいなら黙っておこう」

そうしているうちに、

「人として普通に言っていいこと」まで、自分の中で禁止してしまう。

境界線を引き始めると、このことにも少しずつ気づけるようになります。


最初は「今、言うところや」と自分を奮い立たせる

境界線を引くことに慣れていないと、自然には言葉が出てきません。

むしろ最初は、かなり意識する必要があります。

相手が何か言う。

いつもの自分なら黙る。

でも、一度立ち止まってみる。

「私は今、本当はどう思ってる?」

「これは嫌じゃない?」

「今って、言っていいところじゃない?」

そして、少し勇気を出して言う。

「それは嫌だよ」

「今日は無理」

「私はこうしたい」

最初から自然にできなくてもいいのです。

考えてから言ってもいい。

自分を少し奮い立たせて言ってもいい。

それも立派な境界線の練習です。


言ったあとに「悪かったかな」と思うこともある

そして、やっと言えたと思ったら、次にやってくることがあります。

罪悪感です。

「あんな言い方しなくてもよかったかな」

「私が我慢すれば済んだのに」

「相手、嫌な気分になったかな」

境界線を引いた直後ほど、こうした気持ちが出ることがあります。

でも、罪悪感が出たからといって、境界線が間違っていたとは限りません。

今まで「自分が我慢する」という方法で関係を保ってきた人にとっては、我慢しないという選択そのものがまだ慣れていないからです。

境界線を引くことが怖い理由については、境界線を引くのが怖いのはなぜ?|嫌われる・関係が壊れると感じてしまう理由も参考にしてください。


境界線を引いたから、過去の自分と比較できるようになる

ここから、少し面白い変化が起きます。

以前はずっと同じ場所にいたから、比較するものがありませんでした。

我慢するのが普通。

顔色を見るのが普通。

機嫌を取るのが普通。

でも、小さくても境界線を引き始めると、初めて二つの状態を比べられるようになります。

「前の自分」と「今の自分」です。

そこで、

「前はこんなことまで気にしてたな」

「これくらい言ってもよかったんや」

「断っても大丈夫なことって、こんなにあったんや」

と気づき始めます。

これは、境界線を頭で理解しただけでは、なかなか分からない感覚です。

実際に小さくやってみたからこそ見えてくる違いがあります。


前編まとめ|ピンとこなくても、まず小さくやってみる

今、境界線と言われてもピンとこなくても大丈夫です。

「そんなこと本当にできるの?」

と思っていても構いません。

いきなり大きく変える必要もありません。

まず一つ。

今まで飲み込んでいた言葉を、小さく伝えてみる。

その経験ができて初めて、

「あ、今までの私はこうだったんだ」

と見えてくることがあります。

後編では、境界線を引き始めることで、自分の感覚がどう変わっていくのか。そして、怖さや罪悪感がありながらも少しずつ楽になっていくプロセスを見ていきます。

境界線を引き始めると「自分はどうしたい?」が戻ってくる

長く相手の顔色を見ていると、何かを決めるときの基準が変わってしまうことがあります。

「私はどうしたい?」ではなく、

「相手はどう思う?」

「怒らないかな?」

「機嫌が悪くならないかな?」

が先に出てくる。

でも、境界線を引く練習を始めると、少しずつ自分に質問するようになります。

「私は本当はどうしたい?」

「これは嫌?」

「今日はできる?」

「どこまでなら大丈夫?」

この小さな確認を繰り返すことによって、自分の感覚が少しずつ戻ってきます。


相手が不機嫌でも「それは相手の感情」と考えられるようになる

境界線を引き始めたころは、相手が少し不機嫌になっただけでも怖く感じることがあります。

「やっぱり言わなければよかった」

「私が機嫌を直さないと」

そう思って、また元の関係に戻りたくなる。

でも、何度か境界線を引く経験をすると、少しずつ違う見方ができるようになります。

「相手はいま、不機嫌なんだ」

そこで一度止まる。

「だから私が悪い」までつなげない。

相手には、不満を感じる自由があります。

でも、その不満をすべてこちらが解消する義務があるわけではありません。

境界線を伝えたときの逆ギレや無視、不機嫌への具体的な対応は、境界線を伝えると怒る人|逆ギレ・無視・不機嫌にどう対応する?で詳しく解説しています。


「これくらい言っていい」が少しずつ分かってくる

境界線を引き始めると、何でも強く主張するようになるわけではありません。

むしろ、自分と相手の間にある自然な距離感が少しずつ分かってきます。

「これは言っていい」

「ここは譲ってもいい」

「これは今日は無理」

「これは私が決めること」

全部を拒否するのではなく、自分で選べるようになっていくのです。

以前は「相手が怒るかどうか」で決めていたことを、少しずつ「自分はどうしたいか」でも決められるようになる。

この違いは、とても大きいものです。


境界線を引くことは、相手と戦うことではない

境界線という言葉から、

「強くならないといけない」

「相手に負けないようにしないといけない」

と思う人もいるかもしれません。

でも、本来の境界線は相手と戦うためのものではありません。

自分がどこまでなら大丈夫なのかを、自分で分かるためのものです。

だから、声を荒らげなくてもいい。

長く説明しなくてもいい。

「今日はできない」

「それは嫌だよ」

「ちょっと考える」

それでも境界線です。

具体的な伝え方を練習したい場合は、実践!境界線の伝え方|「嫌」「できない」を相手にどう伝える?も参考にしてください。


最初から自然にできなくていい

ここは、ぜひ覚えておいてほしいところです。

長い間できなかったことを、今日から突然自然にできる必要はありません。

最初は、

「今、言うところや」

と自分に言い聞かせながらでもいい。

言う前に何度も考えてもいい。

言ったあとに怖くなってもいい。

次の日にまた我慢してしまうことだってあるかもしれません。

それでも、またやればいい。

一回できたことは、「自分にもできる」という経験として残ります。

その小さな経験を増やしていくことが大切です。


境界線もベビーステップで変えていける

いきなり大きなNOを言う必要はありません。

ベビーステップでいいのです。

すぐ返事をしない。

一つだけ断る。

今日は一人で過ごす。

嫌だったことを一つだけ伝える。

小さなことから始める。

そして、必要ならまた境界線を引く。

前に戻ったように感じても、また引き直す。

この繰り返しで、自分にも新しい距離感が少しずつ馴染んでいきます。

境界線を何度でも引き直すという考え方については、境界線は何度でも引き直していい|踏み込まれても「伝え続ける」ことが大切な理由でも詳しく紹介しています。


境界線を引いてみて、初めて「前は楽じゃなかった」と気づく

境界線を引き始めたからといって、すぐにすべてが楽になるわけではありません。

最初はむしろ怖いこともあります。

罪悪感もあります。

相手の反応が気になって仕方がない日もあります。

でも、少しずつ続けていると、あるとき比較できるようになります。

以前の自分と、今の自分を。

そこで初めて、

「前の私は、楽じゃなかったんだ」

と気づくことがあります。

いつも相手の機嫌を考えていた。

言いたいことを飲み込んでいた。

自分の予定なのに、相手の反応を基準にしていた。

その状態の中にいるときには、それが普通すぎて分からなかった。

少し外に出たからこそ、見えるようになるのです。


変えるのは難しい。でも、無理ではない

長い間身についた関わり方を変えるのは、簡単ではありません。

「気を使わないようにしよう」

と思っただけで、次の日から何も気にならなくなるわけでもありません。

でも、難しいことと、不可能なことは違います。

一つ言ってみる。

一つ断ってみる。

一回だけ、自分の気持ちを優先してみる。

それを繰り返す。

すると少しずつ、

「私はここまででいい」

「これは言っていい」

「相手が不機嫌でも、全部私の責任じゃない」

という感覚が育っていきます。

自分を変えるというより、自分の感覚を取り戻していく。

境界線には、そんな側面もあります。


まとめ|境界線は、引いてみて初めて分かることがある

境界線について読んでいるだけでは、まだピンとこないこともあると思います。

それで大丈夫です。

まずは小さく、一つだけやってみる。

「今日は無理」

「ちょっと考える」

「私はこうしたい」

そんな小さな一言からでいい。

やってみることで、初めて見えるものがあります。

「私、こんなに気を使ってたんだ」

「こんなことまで怖かったんだ」

「これくらい、言ってよかったんだ」

その気づきが、次の小さな一歩につながります。

境界線は、最初から上手に引けなくてもいい。

怖くても、揺れても、少しずつ変えていくことはできます。

そしていつか振り返ったとき、

「前の私は、ずいぶん我慢していたんだな」

と気づける場所まで来ているかもしれません。


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