境界線を引こうとしたとき、こんな気持ちになることがあります。
「これって、わがままじゃない?」
「自分のことばっかり考えてない?」
「相手に合わせることも必要なんじゃない?」
特に、これまで相手の気持ちを優先してきた人ほど、自分の希望を口にするだけで罪悪感を持つことがあります。
「今日はできない」
「それは嫌」
「今は一人でいたい」
そんな一言さえ、ものすごく自分勝手なことを言っているように感じてしまう。
でも、境界線とわがままは同じではありません。
境界線は、自分の領域について自分で決めること。
自分勝手は、相手の領域まで自分の思い通りにしようとすること。
この違いが分かると、「NOを言っていいのかな」という迷いも少し整理しやすくなります。
- 境界線は「私はどうするか」を決めるもの
- 「嫌」と言うことは、相手を否定することではない
- なぜ境界線を引くだけで「わがまま」に感じるのか
- 「前はしてくれたのに」と言われると揺れる
- 「わがまま」と言われたら、言葉より中身を見る
- 相手が不機嫌になったからといって、境界線が間違いとは限らない
- 前編まとめ|境界線とわがままを分ける一つの基準
- 境界線は「お互いにある」から境界線になる
- 境界線と自分勝手の違いは「相手にも選択肢があるか」
- 「お願い」と「要求」は似ているようで違う
- 「相手を思いやること」と「自分を消すこと」は違う
- 「譲ったら負け」でもない
- 「わがまま」と言われたときの3つの確認
- 境界線を尊重してくれる人とは、NOを交換できる
- 境界線を持つと、むしろ人に優しくできることもある
- まとめ|境界線とわがままは違う
- 関連記事|境界線をもっと知りたい方へ
境界線は「私はどうするか」を決めるもの
境界線を考えるとき、一つ分かりやすい基準があります。
「私はどうするか」を決めているのか。
それとも、
「あなたはこうしなさい」と相手を動かそうとしているのか。
例えば、
「今日は疲れているから、私は行かない」
これは境界線です。
自分の体力、自分の時間、自分の行動について決めています。
一方で、
「私が疲れているんだから、あなたも行くな」
となれば話は変わります。
今度は、相手の行動まで自分が決めようとしています。
境界線は、相手をコントロールするための線ではありません。
自分がどこまでできるのか、何を受け入れないのかを自分で決めるための線です。
「嫌」と言うことは、相手を否定することではない
境界線を引くことに慣れていないと、
「嫌」
と言うこと自体が、相手を拒絶するように感じることがあります。
でも、
「そのお願いはできない」
と、
「あなたが嫌い」
は同じではありません。
「今日は会えない」
と、
「もう会いたくない」
も違います。
一つのお願いを断ることと、その人そのものを否定することを分けて考えていいのです。
NOは、人間関係の終了ボタンではありません。
具体的な境界線の伝え方については、実践!境界線の伝え方|「嫌」「できない」を相手にどう伝える?でも詳しく解説しています。
なぜ境界線を引くだけで「わがまま」に感じるのか
では、なぜ普通に断っているだけなのに、こんなに罪悪感が出てくるのでしょうか。
それまで長い間、
相手に合わせる。
相手の機嫌を優先する。
頼まれたら引き受ける。
嫌でも我慢する。
ということを続けてきた場合、
「自分の希望を優先する=悪いこと」
のように感じることがあります。
だから、今まで100%相手に合わせていた人が、自分の希望を少し入れただけでも、本人にはものすごく大きな変化に感じます。
でも、
「今日は無理」
と言ったからといって、急に自分勝手な人になったわけではありません。
今までほとんど使っていなかった「自分にも選ぶ権利がある」という感覚を使い始めただけかもしれません。
境界線を引き始めて見えてくる変化については、境界線を引き始めて気づいたこと|我慢していた頃の自分との違いも参考にしてください。
「前はしてくれたのに」と言われると揺れる
境界線を引き始めると、相手からこんなことを言われる場合があります。
「前はしてくれたやん」
「最近変わったな」
「冷たくなった」
「わがままになった」
こう言われると、
「やっぱり私がおかしいのかな」
と思ってしまうかもしれません。
でも、相手から見れば「変わった」という部分だけなら、本当にそうなのかもしれません。
今まで断らなかった人が断るようになった。
何でも引き受けていた人が「できない」と言うようになった。
黙っていた人が「嫌」と言うようになった。
それは確かに変化です。
でも、
変わったことと、悪くなったことは同じではありません。
「わがまま」と言われたら、言葉より中身を見る
誰かから「わがまま」と言われたとき、その言葉だけで自分を判断しなくてもいいのです。
一度、中身を見てみます。
私は、自分のことを決めただけ?
それとも、相手の行動まで決めようとした?
相手にNOを言っただけ?
それとも、相手のNOを認めなかった?
自分を守ろうとした?
それとも、自分の希望を通すために相手を責めた?
「わがまま」という評価ではなく、実際に何をしたのかを見る。
そうすると、自分の境界線をもう少し落ち着いて考えられます。
相手が不機嫌になったからといって、境界線が間違いとは限らない
あなたがNOを言えば、相手が残念に思うことはあります。
不満を感じることもあります。
それ自体は、相手の感情です。
でも、相手が不機嫌になった瞬間に、
「やっぱり私が悪かった」
と境界線を引っ込める必要はありません。
相手がどう感じたかと、あなたの境界線が妥当だったかは、分けて考えることができます。
境界線を伝えたときに怒りや不機嫌をぶつけられる場合については、境界線を伝えると怒る人|逆ギレ・無視・不機嫌にどう対応する?もあわせて読んでみてください。
前編まとめ|境界線とわがままを分ける一つの基準
境界線を引くことと、自分勝手に振る舞うことは同じではありません。
迷ったときは、
「私は自分の領域について決めている?」
それとも、
「相手の領域まで私が決めようとしている?」
と考えてみてください。
「私は今日は行かない」
「私はそれを引き受けない」
「私はその話を今はしない」
これは、自分の行動についての選択です。
境界線を持つことは、相手を思い通りにすることではありません。
自分の人生のハンドルを、自分の手に戻していくことです。
後編ではさらに、境界線とわがままの違いを、「相手のNOをどう扱うか」という反対側から見ていきます。
境界線は「お互いにある」から境界線になる
境界線で一番大切なことの一つがあります。
境界線は、自分だけのものではありません。
あなたに境界線があるように、相手にも境界線があります。
あなたが、
「今日は会いたくない」
と言っていいように、
相手も、
「今日は会えない」
と言っていい。
あなたが、
「それはしたくない」
と言っていいように、相手にも同じ権利があります。
自分のNOは尊重してほしい。でも、相手のNOは認めない。
それでは境界線ではなく、自分の希望だけを優先する関係になってしまいます。
境界線と自分勝手の違いは「相手にも選択肢があるか」
例えば、あなたが友人に、
「今夜、電話したい」
と伝える。
これは希望です。
何も問題ありません。
でも、友人が、
「今日は疲れてるから、また今度にしたい」
と言ったとします。
そこで、
「分かった」
と相手の選択を認めることができる。
これは、お互いに境界線がある関係です。
一方で、
「なんで?」
「少しくらいいいやん」
「私のこと大事じゃないん?」
と、相手がYESと言うまで押し続ける。
そうなると、相手の境界線に踏み込んでいきます。
希望を伝えることは悪くない。
でも、相手にも断る自由がある。
この両方が大切です。
「お願い」と「要求」は似ているようで違う
境界線を考えるとき、「お願い」と「要求」の違いを見るのも役に立ちます。
お願いには、相手がNOと言う余地があります。
「できたら手伝ってほしい」
「今日は無理」
「分かった」
これなら、相手にも選択肢があります。
でも、言葉ではお願いの形をしていても、
断ったら怒る。
不機嫌になる。
責める。
何度も聞き直す。
罪悪感を持たせる。
となれば、実質的には「YES以外を認めない要求」になっていることがあります。
NOを言える余地があるか。
これは、人間関係を見るうえでも大切なポイントです。
「相手を思いやること」と「自分を消すこと」は違う
では、境界線を持ったら、相手に合わせなくていいのでしょうか。
そんなことはありません。
人と人なので、譲り合うこともあります。
今日は自分が相手に合わせる。
今回は手伝う。
相手が大変そうだから、少し頑張る。
そういう選択もあっていいのです。
大切なのは、
「自分で選んでいるか」
です。
「今日は私がやろう」
と思ってするのと、
「断ったら怖いから、やるしかない」
では、同じ行動でも中身が違います。
思いやりは、自分を消すことではありません。
自分の境界線があるからこそ、「今回は私がやる」という選択もできるのです。
「譲ったら負け」でもない
境界線を知り始めると、反対に、
「絶対に譲ったらダメ」
「一度NOと言ったら変えてはいけない」
と思ってしまうこともあります。
でも、境界線は勝ち負けではありません。
話を聞いて、
「それなら今回はいいよ」
と考えが変わることもあります。
一度断ったあとに、
「やっぱりできそう」
と思うこともあります。
逆に、最初は大丈夫だと思ったけれど、
「やっぱり無理」
と変えることもあります。
自分で考えて、自分で選び直していい。
境界線は、一度引いたら絶対に動かしてはいけない壁ではありません。
境界線を引き直すことについては、境界線は何度でも引き直していい|踏み込まれても「伝え続ける」ことが大切な理由でも詳しく解説しています。
「わがまま」と言われたときの3つの確認
誰かから「わがまま」と言われて不安になったら、すぐに自分を責める前に三つ確認してみてください。
1.私は自分のことを決めている?
自分の時間、自分の体、自分のお金、自分の行動について決めているなら、境界線の範囲である可能性があります。
2.相手にもNOを言う余地がある?
相手のNOも認められるなら、一方的な押しつけとは違います。
3.相手を罰してYESを引き出そうとしていない?
怒る、無視する、脅す、罪悪感を持たせるなどして相手の選択を変えさせようとしていないか。
この三つを見てみる。
「わがまま」という一言より、実際の行動を見るほうが境界線は分かりやすくなります。
境界線を尊重してくれる人とは、NOを交換できる
安心できる関係では、自分だけがNOを言うわけではありません。
相手からもNOが返ってきます。
でも、それで関係が終わらない。
「今日は無理」
「分かった。また今度」
「それは嫌だな」
「そっか。じゃあ別の方法考えよう」
そんなやり取りができます。
NOを言えることと、NOを受け取れること。
その両方があって、境界線のある関係になります。
安心できる人を見分ける視点については、境界線を引いたあと、人付き合いはどう選ぶ?|「安心できる人」が分かってくる理由も参考にしてください。
境界線を持つと、むしろ人に優しくできることもある
境界線は、冷たいものだと思われがちです。
でも、自分ができる範囲を分かっていると、無理をして限界まで我慢することが減っていきます。
嫌なのにYESと言い続けて、最後に爆発する。
全部引き受けて、あとから相手を恨む。
そうなる前に、
「今日はここまで」
「これはできる」
「これはできない」
と伝える。
すると、できる時には本当に「やるよ」と言えるようになります。
境界線があるから、YESまで自分で選べる。
これは、自分にも相手にも優しい関わり方の一つです。
まとめ|境界線とわがままは違う
境界線を引くことは、自分の希望を何でも通すことではありません。
自分には、自分のことを決める権利がある。
そして相手にも、相手のことを決める権利がある。
その二つを同時に認めることです。
だから、
「今日はできない」
と言っていい。
同時に、相手から、
「私も今日はできない」
と言われることも受け入れる。
境界線とは、
「私の言う通りにして」ではなく、「私はここまで。そして、あなたはあなた」
という考え方です。
もし境界線を引いたときに、
「わがまま」
「自分勝手」
と言われても、その言葉だけで自分の選択を否定しなくていい。
一度、中身を見てください。
私は自分の領域について決めている?
相手にも選択する自由を残している?
お互いのNOを認められる?
そこが分かれば、少しずつ境界線とわがままの違いが見えてきます。
自分を大切にすることと、自分勝手になることは同じではありません。
あなたにも、相手にも境界線がある。
その間に、お互いが無理をしすぎなくていい関係を作っていけばいいのです。



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