インバリデーションとは?
「冗談やん。」
そう言われて、傷ついた気持ちを飲み込んだことはありませんか?
勇気を出して「傷ついた」と伝えたのに、
- 「本気にするなよ。」
- 「ノリ悪いな。」
- 「そんなことで怒る?」
- 「笑って流せばええやん。」
と言われてしまう。
すると、話題は「傷ついた出来事」ではなく、「傷つくあなたがおかしい」という方向へ変わってしまいます。
このように、相手の感情や経験を否定したり、価値のないものとして扱ったりすることを、インバリデーション(Invalidation)といいます。
問題なのは「冗談」ではなく、傷つきを否定すること
ここで大切なのは、冗談を言うこと自体が悪いわけではないということです。
親しい人同士で笑い合える冗談もあります。
しかし、相手が「傷ついた」と伝えているにもかかわらず、
「冗談やん。」
の一言で終わらせてしまうなら話は別です。
その瞬間、話し合うべき内容は消え、「傷ついたあなたがおかしい」という空気が作られてしまいます。
つまり問題なのは、「冗談だったかどうか」ではありません。
傷ついたという事実まで否定してしまうことなのです。
モラハラでよくあるインバリデーションの例
①「冗談やん。」
傷ついたと伝えても、
「そんな本気にする?」
「冗談も通じへんの?」
と言われる。
すると、傷ついたことではなく、「冗談を理解できない人」という立場にされてしまいます。
②「気にしすぎ。」
嫌だった出来事を話しても、
「考えすぎや。」
「気にしすぎ。」
と言われる。
これでは、出来事そのものではなく、あなたの感じ方が問題にされてしまいます。
③「みんな平気やで。」
「私は傷ついた。」と伝えると、
「みんな笑ってた。」
「誰も気にしてへん。」
と言われることがあります。
しかし、周りがどう感じたかと、あなたが傷ついたことは別の話です。
他の人が平気だったからといって、あなたの気持ちが間違っていることにはなりません。
④「悪気はなかった。」
もちろん、本当に悪気がなかった場合もあるでしょう。
しかし、悪気がなかったことと、相手が傷つかなかったことは同じではありません。
「悪気はない。」だけで話を終わらせてしまうと、傷ついた気持ちは置き去りになります。
なぜ「私が悪いのかな」と思ってしまうのか
何度も感情を否定されると、人は少しずつ自分の感じ方に自信が持てなくなります。
- 私が気にしすぎなんかな。
- 冗談を真に受ける私がおかしいんかな。
- もっと我慢せなあかんのかな。
そうやって、自分の気持ちよりも相手の言葉を信じるようになってしまいます。
しかし、傷ついたという感情に「正しい」「間違っている」はありません。
同じ言葉でも、傷つく人もいれば、何とも思わない人もいます。
大切なのは、「そんなことで傷つくな」と決めつけることではなく、「そう感じたんやね」と受け止めることです。
感情を否定され続けると、心の声が聞こえなくなる
インバリデーションが続くと、自分の気持ちを感じることよりも、「これを言ったらまた否定されるかもしれない」と考えるようになります。
すると、少しずつ自分の感情を押し殺すことが当たり前になっていきます。
「私は本当はどう感じているんやろう。」
その答えが分からなくなることも少なくありません。
もし、「傷ついた」と言うたびに、「冗談やん」「気にしすぎ」と返される関係なら、一度立ち止まって考えてみてください。
否定されているのは、あなたではありません。
あなたの「感じた気持ち」そのものが否定され続けているのかもしれません。
すべての否定がインバリデーションではない
ここで大切なのは、「相手に違う意見を伝えること」自体がインバリデーションではないということです。
人それぞれ考え方は違います。
「私はそうは思わないよ。」
「そういう見方もあるね。」
このように、お互いの気持ちを認めながら意見を交わすことは、健全なコミュニケーションです。
問題なのは、相手が感じた気持ちそのものを、
- 「気にしすぎ。」
- 「考えすぎ。」
- 「冗談やん。」
- 「そんなことで傷つく?」
などと言って、存在しなかったことのように扱うことです。
なぜモラハラではインバリデーションが起こるのか
モラハラでは、相手の気持ちを受け止めるよりも、自分が悪者にならないことを優先する場合があります。
そのため、「傷つけてしまったかもしれない」と考える代わりに、
「そんなことで傷つく方がおかしい。」
という方向へ話を変えてしまいます。
すると、自分は謝らなくても済み、問題もなかったことになります。
しかし、その代わりに傷ついた人の気持ちは置き去りになってしまいます。
インバリデーションとガスライティングの違い
インバリデーションは、相手の感情を否定することです。
一方、ガスライティングは、相手の記憶や認識を揺さぶる心理操作です。
例えば、
「あの一言で傷ついた。」
と伝えたとします。
インバリデーションでは、
「気にしすぎ。」
「冗談やん。」
と、感情が否定されます。
一方、ガスライティングでは、
「そんなこと言ってない。」
「思い込みちゃう?」
と、出来事そのものが否定されます。
詳しくは、モラハラ用語|ガスライティングとは?|「あなたがおかしい」と思わせる心理操作をご覧ください。
インバリデーションとトーンポリシングの違い
トーンポリシングは、「言い方」や「口調」を問題にして、本題から話をそらす心理的なすり替えです。
インバリデーションは、「そのくらいで傷つく方がおかしい」と、感情そのものを否定します。
実際のモラハラでは、この二つが続けて使われることもあります。
例えば、
「その言い方やめて。」
と本題をそらし、
さらに、
「そんなことで傷つくなんて気にしすぎ。」
と感情まで否定する。
このように複数の心理操作が重なることで、被害者はますます混乱しやすくなります。
詳しくは、モラハラ用語|トーンポリシングとは?|「その言い方」が論点になる理由をご覧ください。
どう対応すればいい?
インバリデーションを受け続けると、「私が弱いだけなんかな」と考えてしまうことがあります。
しかし、感情は人それぞれです。
同じ出来事でも、傷つく人もいれば、何とも思わない人もいます。
大切なのは、「傷ついた」という気持ちを、自分自身まで否定しないことです。
相手が受け止めてくれなくても、自分まで「こんなことで傷つく私はおかしい」と決めつける必要はありません。
また、何を伝えても毎回「気にしすぎ」「冗談やん」で終わる関係なら、一人で抱え込まず、信頼できる人や専門機関へ相談することも大切です。
まとめ
インバリデーションとは、相手の感情や経験を否定し、「そんなことで傷つく方がおかしい」と扱ってしまう心理的なコミュニケーションです。
「冗談やん。」
「気にしすぎ。」
「考えすぎ。」
こうした言葉が、傷ついた人の心をさらに追い詰めることがあります。
本当に大切なのは、「冗談だったかどうか」ではありません。
相手が傷ついたという事実に、耳を傾けようとする姿勢です。
もしあなたが何度も感情を否定され、「私がおかしいのかな」と感じているなら、一度立ち止まって考えてみてください。
否定されるべきなのは、あなたの気持ちではありません。



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