「俺はこう思う」
そう言われて、
「え、私はそう思わへんけどな」
と思うことってありますよね。
夫婦でも、家族でも、別々の人間です。
考え方が違うことくらい、普通にあります。
でも、その違いをそのまま口にすると、相手が怒る。
だから次からは、少し言い方を変えてみる。
「そういう考え方も分かるよ」
「そう思う人もいると思う」
「でも、こう思う人もおるんちゃう?」
できるだけ否定に聞こえないように、遠回しに伝える。
それでも返ってくるのが、
「ほら。また反対してくる」
「お前はいっつも俺の意見に反対するよな」
だったら。
だんだん、何をどう言えばいいのか分からなくなってきます。
今回の「モラハラ対応分岐図」では、そんな「違う意見を言っただけなのに、“俺への反対”として扱われる会話」を考えてみます。
今回も目的は、相手を言い負かすことではありません。
どう言えば相手を怒らせずに済むかではなく、自分の意見を持ったまま、どこまで話し合える相手なのかを見る。
そこがポイントです。
「お前はいっつも俺に反対する」と言われた。あなたならどう返す?
たとえば、こんな会話です。
相手:
「普通、こう思うやろ」
あなた:
「うーん、そう思う人もおると思うけど、こういう考え方の人もおるんちゃう?」
相手:
「ほら。また反対や。お前いっつも俺に反対してくるよな」
さて。
ここで、あなたならどう返しますか。
A|「いや、反対してないって!」
B|「いや、分かるよ。そういう意味じゃなくて……」と、もっと丁寧に説明する
C|「反対したいんじゃなくて、私はそう思ってないって言ってるだけやで」
どれも、実際の会話なら十分ありそうな返し方です。
では、その先を見てみましょう。
Aルート|「いや、反対してないって!」
あなた:
「いや、反対してないって!」
相手:
「いや、反対しとるやん」
あなた:
「違う意見言っただけやん」
相手:
「それが反対やって言うとんねん。前もそうやったやろ」
あなた:
「前っていつ?」
相手:
「この前も○○のとき、俺が言ったことにいちいち言い返してきたやん」
ここから、
「あれはこういう意味で言った」
「いや、あのときは話が違う」
「そんなつもりじゃなかった」
「でもお前はいつもそう」
と、過去の出来事まで出てくることがあります。
いつの間にか「反対したかどうか」の裁判になる
最初は、ある一つのことについて意見が違っただけでした。
ところが今は、
「私はいつも相手に反対している人間なのか」
を証明する話になっています。
ここで過去の出来事を一つずつ説明し始めると、会話はどんどん長くなります。
「あれは違う」
「それはこういう理由だった」
「そんな意味じゃなかった」
説明すればするほど、さらに説明が必要になる。
こうした状態については、モラハラ用語|JADEとは?|説明・反論・弁明を続けるほど抜けられなくなる理由でも詳しく書いています。
Bルート|もっと柔らかく、もっと丁寧に伝えてみる
あなた:
「いや、分かるよ。そういう考えもあると思う。否定したいわけじゃなくて……」
相手:
「じゃあ何なん?」
あなた:
「ただ、私はちょっと違うかなって思って……」
相手:
「ほら。結局反対やん」
これ、結構しんどい会話です。
なぜなら、次からもっと言い方を考えるようになるからです。
「最初に共感した方がいいかな」
「“でも”って言ったら否定に聞こえるかな」
「もう少し遠回しに言った方がいいかな」
「機嫌がいいときに言った方がいいかな」
そして気づけば、
自分の意見を一つ伝えるために、何重ものクッション言葉が必要になっている。
問題は、本当に「言い方」だけなのか
もちろん、伝え方を工夫することは大切です。
同じ内容でも、攻撃的に言うのと穏やかに言うのでは、受け取り方が違うこともあります。
だから、伝え方を工夫すること自体が悪いわけではありません。
でも、
「そういう考えも分かる」
「否定したいわけじゃない」
「私はこう思うだけ」
と、どれだけ丁寧に伝えても、
最後に自分と違う意見が出た瞬間、「反対された」「否定された」となる。
もし毎回そうなるなら、考えてみたいことがあります。
本当に問題なのは伝え方でしょうか。
それとも、「自分とは違う意見が存在すること」そのものが受け入れられていないのでしょうか。
Cルート|「違う意見を言ってるだけ」と分けてみる
あなた:
「反対したいんじゃなくて、私はそう思ってないって言ってるだけやで」
ここで大事なのは、
相手を説得することではありません。
「あなたが間違っている」と証明する必要もありません。
ただ、
「あなたはそう思う」
「私はこう思う」
この二つを並べてみます。
ここで相手が、
「ああ、お前はそう思うんやな」
「俺とは違うんやな」
と置いておけるなら、意見の違いとして話を続けられます。
どちらかが納得することもあるでしょう。
「今回はこっちにしよう」と折り合いをつけることもできます。
場合によっては、
「まあ、これは答え出えへんな」
で終わってもいい。
夫婦だからといって、すべて同じ意見になる必要はありません。
それでも「いや、お前がおかしい」と言われたら?
ところが、
あなた:
「私はそう思ってないって言ってるだけやで」
と伝えても、
相手:
「いや、普通そう思わんから」
あなた:
「私はそう思うねん」
相手:
「だから、その考えがおかしいって言うとんねん」
となることもあります。
ここまで来ると、また説明したくなります。
「でも○○だから」
「こういう人だっているし」
「ネットにもこう書いてあったし」
「○○ちゃんも同じこと言ってたし」
でも、少し立ち止まってみてください。
自分の意見を持つために、相手の許可は必要でしょうか。
事実関係を確認する必要がある話なら、もちろん根拠を確認することは大切です。
でも、好みや価値観、感じ方まで、必ずどちらか一方が「正解」になるわけではありません。
そんなときは、
「そっか。そこは考え方違うんやな」
で終わらせてもいいんです。
それでも、
「逃げるんか」
「間違っとるって認めろよ」
「また俺の意見否定するんやな」
と続くなら、
「同じ意見にならなあかん話なら、これ以上は話せへんわ」
と会話から降りる選択もあります。
「反対される」と「否定される」は同じではない
ここは、この分岐図で一番伝えたいところです。
「私はそう思わない」
これは、必ずしも、
「あなたは間違っている」
という意味ではありません。
まして、
「あなたという人間を否定している」
という意味でもありません。
意見と人格は別です。
「私は辛いラーメンが好き」
「私は嫌い」
これだけなら、どちらかが間違っているわけではありません。
「カーテンを開けて明るくしたい」
「眩しいから閉めたい」
これも、まずは違う希望が二つあるというところから始まります。
大切なのは、どちらが「普通」なのかを決めることより、
違う希望が出たときに、二人でどう扱えるか。
そこです。
「こだわりがあること」と「相手を従わせること」は別
人には、それぞれ好みがあります。
音が気になる人。
光が苦手な人。
予定変更が苦手な人。
物の置き場所が決まっている方が落ち着く人。
こうした違いには、性格や育った環境だけでなく、発達特性や感覚の特性などが関係している場合もあります。
だから、相手が困っていることに配慮することは大切です。
でも、
「私はこれが苦手だから、どうしたら二人とも困らないか考えよう」
と、
「俺はこれが嫌だから、お前が全部合わせろ」
は同じではありません。
特性への配慮と、家族全員が一人の希望に従うことも同じではありません。
本人も調整する。周囲もできる範囲で配慮する。
その両方があるから、折り合いを探せます。
「違い」なのか、「違いを認めてもらえない」のか
意見が違う。
価値観が違う。
これは、それだけでモラハラではありません。
一度、
「なんでそんな考えなん?」
と強く言われたからといって、それだけで相手をモラハラだと決めることもできません。
見るなら、その後です。
違う意見を伝えたあと、
相手は、
「そういう考えもあるんやな」
と置いておけるでしょうか。
お互いの希望を聞いて、調整しようとするでしょうか。
それとも毎回、
「お前がおかしい」
「普通は俺と同じ」
「また反対してきた」
「俺を否定するな」
となり、最終的に相手と同じ意見になるまで終わらないでしょうか。
その一言だけでは、分からない。次に何が起きるかで、ルートは変わります。
対応分岐図|「お前はいっつも俺に反対する」と言われたら
「お前はいっつも俺に反対するよな」
↓
A|「反対してないって!」
↓
「いや、いつも反対しとる」
↓
過去の出来事が出てくる
↓
一つずつ説明・反論する
↓
「反対した・してない」の弁護ループへ
B|もっと丁寧に説明する
↓
「分かるよ」「否定するつもりじゃない」
↓
最後に違う意見を伝える
↓
「ほら、結局反対やん」
↓
“怒らせない言い方探し”のループへ
C|「反対したいんじゃなくて、私はそう思ってないだけ」
↓
違う意見として置いておける?
YES
↓
「あなたはそう思う」「私はこう思う」
↓
必要なら折り合いを探す
NO
↓
「お前がおかしい」「普通はそう思わない」
↓
同じ意見になることを求められる
↓
「そこは考え方違うんやな」
↓
それでも続くなら
「同じ意見にならなあかん話なら、これ以上は話せへんわ」
↓
会話から降りる
これまでの「モラハラ対応分岐図」
話し合いを始めた途端、
「は?喧嘩売っとんか?」
と言われて、本題から「言い方」の話へ変わってしまうケースは、「は?喧嘩売っとんか?」と言われたら?|モラハラ対応分岐図で紹介しています。
また、問題を指摘した途端、
「お前の方がモラハラやろ」
と返され、自分を弁護する側になってしまうケースは、「お前の方がモラハラや」と言われたら?|モラハラ対応分岐図で解説しています。
最後に|自分の意見を言うたびに、許可を取らなくていい
相手と違う意見を言うたびに怒られると、少しずつ言い方が変わっていきます。
最初は、
「私は違うと思う」
だったものが、
「分かるよ」
「もちろんあなたの考えも間違ってないと思う」
「否定するつもりじゃないんやけど」
「怒らんと聞いてほしいんやけど……」
と、どんどん前置きが長くなっていく。
それでも違う意見を言った瞬間、
「また反対された」
となる。
そんな状態なら、
「もっと上手な言い方を探さなきゃ」だけで考えなくてもいいのかもしれません。
考えてみてほしいのは、
私は、違う意見を持つこと自体を許されているだろうか。
ということです。
あなたはそう思う。
私はこう思う。
違うから、必要なら話し合う。
それでも違うなら、違うままのことだってあります。
相手と違う意見を持つことは、相手への攻撃ではありません。
そして、自分の意見を伝えるたびに、
「あなたを否定していません」と証明し続けなくてもいいんです。



コメント